「なぜ?」と質問してはいけない

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※この記事は過去に社内で共有したものの転載です。

お正月の読書に。プロダクトマネージャーにおすすめの本2冊』という記事で紹介されていた『途上国の人々との話し方―国際協力メタファシリテーションの手法』という本が面白いので紹介する。

ユーザーインタビューでなんだか芯をくったヒアリングができなかった、立場や価値観が違うお取引先との対話で相手の事象をうまく理解できなかったなどの経験をお持ちの方向け。ホンネを知りたい・本質的な課題を特定する質問力を上げたいという方にお勧めの1冊。

この本は国際協力を行う際に、うまく現地の人のインサイトを捉え、オーナーシップを持ってもらってプロジェクトを成功させる方法について紹介されている。

そこでは「メタファシリテーション」という「事実に基づいた質問を繰り返して真のインサイトを把握する」という方法が取られており、我々でも以下のような場面で役立ちそうだと感じた。

  • 振り返り会などで議論の空中戦を避けられる
  • 後輩やチームメンバーのコーチング(モチベート)に役立つ
  • (私の現在の仕事ではほとんど無いが)ユーザーインタビューで役立つ

本の概要

メタファシリテーションとは何か、こちらのページから引用する。

地域づくりの活動で、所属しているNPOや企業のミーティングで、個人への相談対応で・・・こんな経験ありませんか?
-「お困りのことはありませんか?」「〇〇は大丈夫ですか?」と質問しても、「大丈夫です」と言われ、その先が続かない
-「ミーティング(研修)に参加してください」と、住民(クライアント、同僚など)に何度も言わないと参加者が集まらない
-言葉ではやる気を見せるが、実際には動かない人への対応に時間をとられる
-相手から「もっと〇〇があれば」「予算が足りない」「こういうサポートがあったらよかったのに」という言葉がよく出る
-議論の最後には「システムがないから・・・」「経済偏重の社会が・・・」「市が(本社が、政府が)こうこうだから・・・」「ひとりひとりの意識の変化が・・・」と大きな話になってしまい、具体的なアクションに結びつかない
・・・これでは、活動や組織のホントの課題に迫り、メンバーを課題解決に乗り出そうという気にさせることはできません。

その中で、「じゃあ井戸を掘ろう」と話を進めてしまっても、現地の人はオーナーシップを持てていないし「ただでもらえるなら…」と深く考えずに受け取ってしまう。そしてメンテナンスされずに使われなくなっていく。同様の事態は国際協力の場面ではなくて、我々のソフトウェア開発プロジェクトでも同じ問題は思い当たると思う。

メタファシリテーションでは「意見を求める質問」ではなく、「事実に基づいた質問を続ける」ことでそれに対処する。

https://note.com/takumijp/n/nd917681b4595

例えば、朝ごはんをテーマに質問を組み立てると、

①「今日朝ごはん何を食べた?」→事実
②「いつも朝ごはんに何を食べる?」→考え、観念
③「朝ごはんに何を食べるのが好き?」→感情、気持ち

のようになります。①は今日の朝食べたもの、たとえば僕は、今朝パンを食べました。②は、基本的にうちの朝ごはんはいつも朝はパンなのでこれもパンだと思います。③で言えば、今は遠すぎて涙しか出ませんが僕は味噌汁、ご飯、納豆の三点セットが好きです。

この中で現実に基づいて真実を言っているのは①だけです。最初に事実と書いてしまったのでそりゃそうだろと思うかもしれませんが、僕たちは日常会話の中で②と③すら真実と捉えてしまいがちです。

いつも朝ごはんに何を食べるかと聞かれたら、僕は最近3日連続でパンだったからそう答えるけれど、マンダジ(揚げパン)の日もあるし、チャパティ(厚めのクレープみたいなやつ)の日も確かにある。決して「いつも」朝ごはんにパンを食べているわけではない。

その中で最初に紹介され、衝撃的だったのが「なぜ(考え、観念)」と聞いてはいけず、「いつ(過去の事実)」などでを聞くのがよく、そうすると「当事者自身で問題に気づき始め、オーナーシップを持ってもらえる」と言われていたことだ。

実際には「いつ」が頻度が高いだけで、実際は「誰が」「何を」「どこで」とかを使い分けて質問する必要がある。その聞き方を続けていくのだが、「相手の立場に立ってストーリーを考えて、それが正しいのか確認する」というような方法で、やや熟練が必要そうではあった。

例を読んでいると、世間話のような内容から核心をつくインタビューが生成されているので、かなり面白い。今考えると、新卒での入社前に出会った弊社の人事の方の話し方がこれに近かった気がする。

他にも「大正時代の日本も貧困だったが、自分たちの手で水道を引いた話を(メタファシリテーションの方法を使ったら)親から聞いた(※筆者の一人は60代)。途上国の人びとが自分たちの生活にオーナーシップを持てていないのは国際支援のせいじゃないか?」と悩んだり、資本主義経済の中で計画性を持つ必要性に気付かせたり、面白い部分は多い。

「(アドバイスより相手に気づいてもらうことのほうが重要なので)アドバイスをしたくなる気持ちが出てきたら一分待とう」みたいなコーチング的なアドバイスもあった。

おすすめの音楽

クウチュウ戦

「議論が空中戦になったら、事実に基づいた質問で地上戦に戻せ」というアドバイスがあったため。

参考文献

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Takeshi Ninomiya
Takeshi Ninomiya

Written by Takeshi Ninomiya

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