関心でまとまった共同体
※この記事は2023年4月に社内で共有したものの転載です。
「専門分野の越え方」という、京大のインフォーマルな勉強会コミュニティ(?)の話を読んでいた。
専門分野も違う,興味関心もてんでばらばら。そんなメンバーが集い,「大学院生が学部生に模擬講義を行う」という活動をやり始めた。こうした特殊な事情のために,私たちは常に「異質な他者と共に何かに取り組むとはどういうことか」という問いにさらされることになった。
本書では,この問いに対して,「学際性」と「共同性」という二つの視点から考察を加えていく。ミカタに中心的に関わってきたメンバーの論考に加えて,第一線で活躍する外部研究者を含めたさまざまな「他者」を巻き込みながら議論が展開される。(「序章」より)
その中にリチャード・ローティの「探求の共同体」という気になる話があった。
この中の「関心(interest)」という概念が面白かった。
- ローティ曰く、分析哲学という分野は、以前は「共通の方法論(言語分析)」とか「共通の目標」でまとまっている分野だと言われていたが、実際は「共通の関心」で集まった分野と言ったほうが実態に近い
- 共有されるのは問いそのものではなく、それをめぐる「関心(interest)」だという
- 学際的なコミュニティでは「他者が気にしていること(interest, concern)が何であるか気に」する必要があって、相手の関心についての関心(「二階の関心」や「メタ関心」)を持とう
また、別の人の話だが、分野によってツッコミを入れること(例えば統計的な処理が間違えてないかだったり、研究の目的が変な方向じゃないかだったり)というマイナスの関心みたいなもの(たしかconcernと呼ばれてた)を強調している人もいた。
関心は、デューイの言う「衝動(※このとき社内で組織学習の話が多かった)」に近い「探求の起点になるモチベーション」になるようなもので、おそらくそれを「共通の”関心”のある人が集まって有意義なコミュニティができる」と主張しているものだと思う。
安直だが、社内のサークル活動やコミュニティ活動をするとき、「目標」ではなく「関心」でまとめると整理しやすいんじゃないかという気がする。
また、「一貫した理念(我々の言葉ではビジョンのようなもの)がなくても、共通の関心があればコミュニティとして成立する」という、我々にとっては新しい考え方を含んでいるように思う(し、趣味サークルも含められる考え方だと思う)。
というわけで、ChatGPT先輩に聞いてみた(いつもの)。
リチャード・ローティの「共通の関心事に基づいて探求するコミュニティ」の概念を、会社内のコミュニティ施策に応用することは、非常に有益な視点を提供することができます。以下に、この視点から考えられる会社内コミュニティ施策のポイントを整理します。
1. 共通の関心事を見つける 会社内の異なる部門やチームが共通の目標や関心事を持つことで、協力やコラボレーションが促進されます。共通の関心事を明確にし、それを基盤としたコミュニティを形成することで、従業員同士のつながりや意思疎通が向上するでしょう。
2. 柔軟な組織構造 ローティの考え方から学ぶことができるのは、コミュニティは必ずしも一貫した理念や方法論に基づかなくても成立するということです。会社内でも、柔軟な組織構造を持ち、異なるアプローチやスキルを持つ従業員が共同で働くことができる環境を作ることが重要です。
3. オープンなコミュニケーション 共通の関心事を持つコミュニティでは、オープンなコミュニケーションが重要です。従業員が自由に意見やアイデアを共有できる場を設けることで、新たな視点やアプローチが生まれ、問題解決やイノベーションが促進されるでしょう。
4. 継続的な学習と成長 会社内のコミュニティは、共通の関心事に基づいて継続的に学習し、成長することが求められます。従業員に研修や教育プログラムを提供し、スキルの向上や専門知識の深化を支援することで、コミュニティ全体が発展します。
5. 目標の共有と評価 共通の関心事に基づくコミュニティでは、目標の共有と達成状況の評価が重要です。目標を明確に設定し、定期的に達成状況を評価・共有することで、従業員は自分たちの働きがコミュニティ全体にどのような影響を与えているかを理解することができます。これにより、個々人のモチベーション向上やコミュニティ全体の目標達成に向けた取り組みが促進されるでしょう。
6. クロスファンクショナルなチーム 共通の関心事を持つコミュニティでは、異なる部門やバックグラウンドを持つ従業員が協力して問題に取り組むクロスファンクショナルなチームが効果的です。このようなチームは、多様な視点やアプローチを活用してイノベーションを生み出す可能性が高まります。
7. コミュニティの文化と価値観の共有 共通の関心事に基づいて探求するコミュニティでは、文化や価値観の共有も重要です。会社内で共通の価値観や文化を定義し、それを従業員に浸透させることで、コミュニティがより結束力を持ち、円滑に機能するようになります。
8. 社内イベントや交流の場の提供 共通の関心事を持つコミュニティの発展には、社内イベントや交流の場が有益です。定期的に開催されるワークショップや勉強会、社内交流イベントなどを通じて、従業員が互いに知識やアイデアを共有し、つながりを深めることができます。
これらのポイントを踏まえた会社内のコミュニティ施策は、従業員が共通の関心事を中心に協力し、学び合いながら、組織全体として成長する環境を作り出すことができます。このような環境は、従業員の満足度や組織のパフォーマンス向上に寄与するでしょう。
いや、でも数学部で「共通の関心」を見つけるのはかんたんじゃなさそうだな…。
また、「こうした”関心”でコミュニティを分析した思想家や分野はいるか?」とも聞いてみた。
はい、「関心」に近い概念を使ってコミュニティの分析をしている思想家や社会科学の分野はいくつか存在します。以下に、そのような思想家や分野をいくつか紹介します。
ユルゲン・ハーバーマス ドイツの哲学者で社会学者のユルゲン・ハーバーマスは、コミュニケーションの理論を提唱しています。彼は、「共通の関心事」に近い概念として、「合意形成」や「理想的な意思疎通の状況」を重視し、コミュニケーションがどのようにしてコミュニティの結束を生み出すかを分析しています。
ピエール・ブルデュー フランスの社会学者であるピエール・ブルデューは、「ハビタス」と「資本」の概念を用いてコミュニティを分析しています。彼は、共通の価値観や慣習を持つ個人たちが、特定の社会的空間で「ハビタス」として類似した行動をとることで、コミュニティが形成されると主張しています。
クロード・レヴィ=ストロース 人類学者であり構造主義の創始者であるクロード・レヴィ=ストロースは、文化や社会構造の分析において、共通の意味や価値観を持つ人々が形成するコミュニティを研究しました。彼は、神話や伝説を通じて、人々が共有する基本的な構造やパターンを解明しようと試みました。
社会資本の理論 ロバート・D・パットナムやジェームズ・コールマンなどの社会科学者たちが提唱する「社会資本」の理論は、「関心」に近い概念を用いてコミュニティを分析しています。社会資本とは、人々のつながりや信頼関係を通じて生まれる価値や資源のことであり、共通の関心事を持つ人々が互いに協力し、コミュニティの発展に貢献する力を指します。
これらの思想家や社会科学の分野では、「関心」やそれに近い概念を用いて、コミュニティの形成や発展、機能を分析しています。これらの理論や概念は、人々がどのようにして共通の価値観や目標を持ち、どのようにコミュニケーションを通じて協力や信頼関係を築くかを理解するための重要なツールです。
これらのアプローチを利用することで、コミュニティがどのように結束し、発展するかを研究し、より効果的なコミュニティ施策や組織運営の方法を見つけることができます。また、これらの理論や概念は、異なる文化や社会的背景を持つ人々が共存し、協力する多様なコミュニティを理解し、支援するためにも役立ちます。
結局のところ、共通の関心事や価値観を持つ人々が形成するコミュニティは、その構成員が互いに協力し、学び合い、成長するための基盤を提供します。これらの理論や概念を用いてコミュニティの分析を行うことで、より効果的なコミュニケーションや協力の方法を見つけることができ、コミュニティ全体としての発展に寄与するでしょう。
「関心」の範囲が広すぎな感じもするが、ハーバーマスやパットナムとかはたしかに近いことを言ってそうなイメージがある。
っていうかローティの言う「関心」が何なのかをちゃんと考えると意外に難しそうだ。